新しい男 1

 仁は『侑』になって私を抱く。  私が仁に『侑』を求めることは、仁にとっても兄妹でセックスをすることの罪悪感を軽減する効果があるのかもしれない。仁は意外とモラリストで繊細だから。  そんな仁は一度侑の仮面を着けてしまうと…

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岩崎家

 私が実家のことを思い出す時、今の家ではなく改築前の家が瞼に浮かぶ。  祖母の小さな畑があった庭。さるすべり、つつじ、ライラック、椿に柿の木。 ホウセンカの鉢植え。日の当たる縁側。長年かけて磨かれ、黒光りする長い廊下。 …

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四葉のクローバー

二十七歳の誕生日は、メールやSNSの掲示板に友人から『おめでとう』というメッセージが書き込まれ、そして大抵、一緒に『結婚おめでとう』と付け加えられていた。  私はそれらのコメントに『ありがとう』と返事を打ち、ディスプレイ…

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勝負の行方 1

 夏休み前の土曜日。  ぽってりした雲が点々と薄水色の空に浮かんでいた。普通なら京でも誘って買い物や映画にでも行くのが普通だけど期末試験前とあってはそうも言ってられない。  私は朝ご飯の後、パイル地のホットパンツと、ユニ…

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検事 久賀丞已 ~1st Impression~

短いノックの音に我に返ったが顔を上げたタイミングで、ドアが開いた。 「やっぱりここでしたか。もう十一時ですよ。部長が『篠塚がつかまらない』と私に電話して来て」 雅季は、向かい合わせた机の、二つの小島のある執務室に入って来…

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アドラム伯爵のメイド面接

クライド・アドラム伯爵が書斎で三つの領地財産目録の評価を確認していると、部屋の扉がノックされたので、入室を許可すると、執事の後ろからヴェール付きの帽子を被った小柄な女性が入って来た。 「旦那様、お約束の……」  一瞬眉を…

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