楽園へ

『レスアの公使が到着する前に、キアラは宮殿に来なくてはならない。公使はキアラと一対一の面会を所望している。そこで彼女はおまえの妻としてカルファの寵愛を受け、容認されたと自分の国の使者たちになんとしてでも証明するのだ』  …

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和解(後編)

 ラシャードに全裸にされても、まだキアラの中では愛と怒り、そして安堵がないまぜになっていた。ラシャードは彼女の体に腕を回して強く抱きしめると、首筋に顔をうめた。そうして体にキスをし始めると、キアラは細く長い息を漏らしてし…

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和解(前編)

 ラシャードと母親が面会したその夜、呼び出したキアラが庭にある小さな宮殿の一室に入ってくるのがわかったが、彼は絨毯の上のクッションに身体を預けながら、手にした羊皮紙を読むふりを続けた。  キアラが足早に駆け寄ってくる気配…

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制裁

 キアラがラシャードの宮殿を追い出されてから二日しか経っていなかったが、宮殿での生活はすでに遠い昔のように思える。  後宮では、ラシャードに見限られたキアラを同情の目で見る者もいれば、あけすけな嘲笑と蔑みを表情に浮かべる…

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陰謀

 サヒドの前に、満面の笑みをたたえた黒髪の女が跪いている。 「御運に恵まれましたわ。あの手紙がお役に立ったようで光栄です。捕まったレスア人は地下牢に閉じ込められ、娘は宮殿から追い出されて私と同じ後宮へ……。王子は娘への罰…

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侵入者(後編)

  *  エニアスが宮殿を去って数日後、キアラは部屋で本を読んでいた。ラシャードと一緒に読んだこともあるジュナイの民話だ。ラシャードがキアラを抱くように後ろに座り、彼の低い声で囁かれる異国の物語に耳を傾けるのが何よりも幸…

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侵入者(前編)

 キアラは部屋の窓から、庭の様子を見ることもなしに見ていた。アーチの向こうで、エギュンがラシャード自慢の鷹を青空に放しては呼び戻し、肉を与えている。 (あれだけ愛し合ったのに、愛し合えば愛し合うほど満たされないなんて) …

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別れ(後編)

 じわじわと膣壁を押し分けて逞しい肉幹が確実に自分を満たしていく。ラシャードのしなやかな身体にしがみつき、浅い呼吸を繰り返していたキアラは、身体を引き裂くような鋭い痛みに、思わず息を止めた。 「痛むか……。すまぬ。おまえ…

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別れ(前編)

 キアラは、陽がだいぶ高く昇った頃、清々しい気分で目を覚ました。  奥の浴室で水浴びをしたあと、明るい水色の、足首まであるアバヤドレスを着た。もうアズーラに身支度を手伝わせなくなっていた。  最後に、ラシャードに贈られた…

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焦がれる

 ラシャードが自分から距離を取ったことで、今までどれほど彼が自分の側にいたか、その存在の大きさを痛感したキアラは、眠れない夜を過ごしていた。  彼の手に触れたい、声を聞きたい、見つめ合いたい……ラシャードを焦がれる気持は…

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亀裂(前編)

 翌日の夕方、キアラがエギュンを共に東の宮殿の庭まで来ると、そこにラシャードを見つけた。  普段は噴水の近くの大理石のベンチに座り、キアラを待っているラシャードだったが、今日はなにやら落ち着き無くそわそわと歩き回っている…

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お仕置きエッチ(後編)

 まともに目を合わせられず、横を向いていた俊のうなじに、ふと手が触れてくる。Tシャツの丸い襟元をなぞられ、それだけで全身の肌が粟立った。 「あのさ、このTシャツ、俺のじゃねえな」  身を乗り出した佐野が、シャツの上から腹…

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お仕置きエッチ(前編)

「えっ、フロンターレとエスパルス!? 今日かよ! 急だな。いや、いくいく! 全っ然、暇。おお、じゃあ、あの駅近のカフェDで五時な」  シャワーを浴び、朝食がわりのコーヒーを入れていた俊は、譲(ゆずる)からのッカー観戦の誘…

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新しい家族

「ほんとうに、よかったの?」  夢から覚めるように思い出がすうっと引いていく。割り込んで来た尚紀の声が現実と私を繋ぎ始める。  老舗旅館の広縁から見おろす庭の景色がかたちを取り戻す。  満月が夜霧にしみてしっとりとあたり…

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私の愛しい、奴隷さま

 一歩、二歩、三歩……窓から部屋の入り口のドアまで大股で歩いて九歩だった。では普通の歩幅で……一歩、二歩…………十三歩。数が悪い。もう一度。今度はやや歩幅を狭めて窓の方へ戻る。  一歩、三歩……八歩、今度は十四歩。  マ…

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幸せのヒント 2

*** 「比和さ、今度オレおまえに合わせて平日に休みとるから、動物園にでも行かねえ?」  私が尚紀と同棲し始めても、もちろん、「侑」としての仁と密会は続いていた。私に、必要不可欠なものだから。 「何? 急に。それは侑兄と…

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幸せのヒント 1

 尚紀とセックスをしたのは付き合って三ヶ月後だった。  有り体に言えば、私が誘ったようなものだ。『ご飯つくりにいこうか』と切り出し——比和子さんの手作り? 嬉しいな。じゃあ、好き嫌いある? ——こんな自然な流れで約束して…

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新しい男 2

 それでも、私の存在を全く無視しているわけではなく、たまに私の方に顔を向け、返事を待つような素振りも見せた。  そんな時は一応適当に相づちを打って過ごした。それ以外は黙ってせいろと口の間で箸を泳がせ続ける。  あ、アメリ…

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新しい男 1

 仁は『侑』になって私を抱く。  私が仁に『侑』を求めることは、仁にとっても兄妹でセックスをすることの罪悪感を軽減する効果があるのかもしれない。仁は意外とモラリストで繊細だから。  そんな仁は一度侑の仮面を着けてしまうと…

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巣立ち 3

 玄関の明かりがぱっと点くと、三和土にきちんと父と仁の革靴が並んでいるのが目に入る。仁の、溶かしチョコレートのような透明感のある艶の、上品な革靴を見るとなんだか胸にぐっと来た。  こういうの、悪い兆候だ。喉が渇く。  あ…

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巣立ち 2

 仁兄と一度セックスしたものの、その後も変わらず、私たちの間には清く正しい兄妹関係が一年近く築かれていた。  いや、『兄妹関係はもともと清く正しいもの』というのは当たり前の話なんだけど。社会通念では。  サービス業で週末…

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巣立ち 1

 侑兄は私と兄妹で良かったと言った。  仁兄は私と兄妹であることを残念に思っているようだ。  この違いって、なんだろう。  私の仁兄への気持ちは、一度だけ体を重ねることでなんとか収まる予定のはずだったけど、残念ながらどん…

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思春期 3

 唇で、唇を弄ぶように啄む口づけはやがて深さを増し、熱い舌が入り込んできてその小さな身をくねらせながら上あごや舌の脇をくすぐった。  唾液が混ざり合い、微かな水音がたつのにもそう時間はかからなかった。彼が私の舌をすくい、…

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思春期 2

 ***  出張の朝、着替えの入った少し大きめのショルダーバッグを斜に掛け、テイクアウトのカフェラテを片手に品川駅から「のぞみ」に乗り込む。  あっという間に過ぎ行く光景を、窓から目を細めてただ眺める。  寒気に澄み切っ…

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思春期 1

 抜き打ちで仕事場に侑が迎えに来る。  でも、来る日はなんとなくわかる。今日もね、ほら、スーツ姿で、モレスキンのトートを肩にふらりと閉店間際のショップに現れる。  店長に礼儀と愛想の絶妙なバランスの挨拶をして。 『じゃあ…

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時を駆けるうさぎ 2

 母が倒れた夜、仁兄は偶然駅でてつやくんに会ってそのまま飲みに行き、家に帰ったのが午前二時頃だった。  キッチンに倒れている母を見つけて、救急車を呼んだ。父に連絡して、侑と父は朝一で出張先から戻って来た。  彼らが病院に…

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本当の兄弟 2

「ごめん、なんか自分見失って、ついがっついた。まず風呂でも入って汗流すか」  まるでマンガのキャラように、照れて頭を掻く隆兄が可愛く見えてしまう。  普段見せない兄の狼藉に、怯えた気持ちも消えてしまい、代わりに慈愛にも似…

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本当の兄弟 1

 あのときの、仁兄の言葉の意味なんて考える余裕が無かった。仁兄にバレたことで、侑兄と私の関係がどうなるか。それしか頭に無かった。仁兄が家を出て行ってくれたことでとにかく難を逃れた。そう思った。  侑兄にはあの日のことは話…

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負け犬

 侑兄が大学に受かった日のことはよく覚えている。底冷えのする冬の朝。  ずっしりと重そうな灰色の雲が空を覆い、湿っぽい空気が骨に沁みるようだった。  私は学校でそわそわと落ち着きなく携帯を何度となく見、合格の知らせを今か…

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本当に欲しいもの

 学園祭が終わって生活が落ち着きを取り戻した頃、京が黒崎君と付き合う事になった。彼が、京に告白したという。  いつもの放課後女子会で嬉しさを隠そうともせずに、笑みを満面に浮かべて報告する京は、無防備で、稚く、そして艶めい…

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