心も体もセンセー好みの女にされた俺(後編)

「っ……ふ、んん、ぅふ……ん」

 ベッドに下ろされた途端、キスで口を塞がれた。歯列を割って強引に侵入してきた舌は熱く、ねっとりと口内を舐め回してくる。舌の裏をチロチロとくすぐられただけで、腰に快感が重く響いた。

 なんか、いつもより感じやすいかも……。二日ぶり、だから……?

 俊は激しいキスに呼吸を乱し、相手の舌の動きに必死で応えながら、ぼやけていく思考の中でそんなことを思った。

 佐野はブラを剥ぎ取り、キスの間中、下腹から一枚だけ身につけた下着の上に手を這い回らせて確実に欲情を煽っていた。俊がその焦らしに耐えられずに太腿をすり合わせると、やっと下着の中に手が入ってきた。

 秘唇を指でなぞられ、それだけで下腹が震えた。指が少し沈められると、ヌプッという湿った音がして、なめらかに奥へ侵入してくるのがわかる。

「ふ、ぁあ……ん」

 溢れた唾液ごと、強く舌を吸われて唇が離れた途端、指が濡れた襞を擦った感触に、甘い喘ぎ声が溢れてしまった。

「なんか、いつもよりすげえいやらしい匂いがする」

「そ、そっちがシャワー浴びなくていいって……」

 臭い、と言われているようで、俊は本気で泣きそうになった。離れようと身を捩らせると、股間に触れていない腕がすぐに腰を引き寄せる。

「それが好きだって言ってるんだよ。なあ、もっと、濡らして欲しい?」

 指がヌプっと浅瀬をかき混ぜた。

「べ、別に……」

 言葉とは裏腹に、身体は自分を裏切っていた。その証拠に、襞を弄んでいる指が立てるピチャピチャという水音は次第に高くなりつつある。

「そう?」

 奥を刺激されないもどかしさに、腰が痙攣した。膣の中ほどを探るように前後に動く指を媚肉がきつく締め付ける。愛撫は決して激しくないのに、相手は、男の自分が知らなかった性感帯を暴き出してじっくりと攻め、確実に快感を与えてくる。

 俊は、すでに感じまくってる自分の顔を見下ろす佐野の視線に耐えられず、ぎゅっと目を閉じた。

「ダメ。俺を見ろよ。じゃなきゃ、気持ちよくしてあげないよ」

 子宮口付近を柔らかく刺激しながら佐野は尖りきった乳首をちゅっと吸う。

「ん……っ!」

 思わず目を開けると、相手は満足げに笑った。

「よし、ご褒美な」

 やっと指が奥まで挿入される。すぐに指を曲げるようにして、熱くとろける膣内をグチュグチュと掻き回された。それだけで、佐野に飼いならされた性感はどんどん高まり、腰が鈍く痺れてくる。

「ほら、もうこんなにトロトロになってるし」

「あぁ……ちが、う……今日は、なんか……」

 変、と言おうとした矢先、指を咥え込んでいる場所からさらにコポっと濃い蜜が溢れる感触に、膣がキュンキュンと収縮した。

「すっげ、溢れてくる……せっかくのパンツ、汚さないように脱がせてやる……」

 ぬるっと抜けていく指の刺激にさえ、背筋を戦慄が走り抜けた。ショーツの両脇にかかった手が、ゆっくりと下りていく。

「あ……」

 太腿の真ん中あたりまで下着を脱がせた佐野が声をあげた。小さくも、その声音がどこか尋常ではないことに気がつき、俊も身を起こす。そして、佐野の視線が釘付けになっている下着に目をやり、愕然とした。

「お前……本当に、女になっちゃったな……」

 めくられた下着のクロッチ部分に付着した俊の溢れさせた粘液には、薄いが朱が混じっていた。俊はそれが何かを認識しつつも佐野の言葉を受け止められず、軽いパニックに陥り、相手を縋るように見つめた。

「これ、これって、血? どっか、中、切れちゃったとか……?」

 佐野はすぐに俊の横に来ると震える体を強く抱きしめた。

「いや、たぶん、ていうかこれ、100パー確実に生理だろ。汗の匂い……、そうか、フェロモンだったんだな」

 えっ、と目を見開いた俊に佐野は畳み掛けた。

「俺が留守の間、なんかおかしなことなかったか。体調……、熱っぽいとか、頭痛とか、腰痛とか」

 さすが養護教論だけあり、質問はポイントを突いてくる。

「そういえば、腹が痛いっていうか、腰がだるいかなっていうのは……」

 俊は、思い当たることを口にしながら、それが本当に生理だという確信に恐怖を感じた。

 本当に、本当に女になったのか。もう、男に戻れないのか。

 ベッドを下りた佐野は、すぐにバスタオルを手に戻ってきた。オロオロしている俊の下着を脱がせ、手際よく下半身をタオルで包む。そのまま寝かせて掛布を顎まで上げ、小さな子供を寝かしつけるように頭を撫でた。

「とにかく、俺、生理用品買って来るから。温かくして安静にしとけ」

 俊が困惑のままコクコクと頷くと、佐野はマッハで服を着て部屋を出て行った。

 佐野が買ってきた大量の生理用品——羽なし、羽あり、軽い日用、普通の日用、夜用、スリムタイプ、サラサラ、コットン肌触り、タンポン——がベッドの上に広げられると、俊は軽いデジャブを感じた。

 その種類の多さに軽い目眩さえ覚えた俊に、佐野は次々とパッケージのコピーを読み、どれがいいかと目を輝かせて聞いてくる。この男は一体どんな顔してこれだけ大量の生理用品をレジに持って行ったのか。それも自分のためだけに。そう思うと口元が緩んだが、すぐに、それは罪の呵責のなせる行為だと思い当たる。

「……ばっかじゃねーの。こんな大量に。全部使えるわけねーだろ」

「でも万が一、来月も、ってこともあるだろ?」

 すんなり返ってきた言葉に、喜んでいいのか悲しむべきなのか俊は咄嗟にわからない。

「あ、そうだ。赤飯炊くか?」

「炊くなよ!」

 枕をぶん投げると、相手はそれを受け止めてあぐらをかいたまま、ポツリと言った。

「生理って、赤ちゃんができる準備ができましたよ、ってことだよなあ」

「えっ!」

「いやいやいや、なんでもない。独り言!」

 にしては、やけにでかかったじゃねえか。でも……。

 俊は再び生理用品を吟味し始めた佐野をちらりと一瞥する。

 そういうことなんだよな……。現実は。今までみたいにガンガン中出しされたら、できちゃうんだよな……。

「もう、これでいいか? とりあえず軽い日用、羽なし、コットン肌触りで」

「ど、どうでもいいよ。早くしろよ」

 なに、考えてるんだよ、俺……。

 俊は我に返り、慌てて頷いた。すぐにナプキンを貼り付けた生理用ショーツ(佐野はこれも買っていた)を穿かされ、普通にスウェットの上下に着替えた。

「腰痛とか、ひどかったら腰さするから言えよ。鎮痛剤もあるけど、最初からあんまり使わないほうがいいだろう」

「食欲ある? 夜はそうめんとかさっぱりめにしとく?」

「カモミールティーが効くってネットにあったけど、買って来るか?」

「脚、むくんでない? 揉む?」

 ナプキンの感触に慣れず、おとなしくソファに座ってipadでゲームをしている俊に、佐野は数分ごとに話しかけてきた。

「吐き気とか、ない? 特別に食べたいものとか、みかんとか買ってくるけど……」

 さすがにそれを聞くと、俊はipadを脇に置いてため息をついた。

「妊娠すっ飛ばしてつわりかよ。センセー、あんたがそんな動揺してどうすんの? 養護教論だろ?」

 まあ、座れよ。と俊はソファの自分の隣を叩くと、佐野がどさっと体を沈めた。

「動揺しないわけないだろ。お前の体が確実に変化しててさ。お前の方が妙に落ち着きすぎなんだよ」

「だって、解決法がないのに慌ててもしょうがねーだろうが」

 俊はそう言われて、初めてそれに気がつき自虐的に笑った。

「ある、って言ったらどうする」

 鋭い佐野の視線に射抜かれ、笑いが凍りつく。

「相当高い確率で男に戻れる薬を俺が持って帰ってきたって言ったら、どうする」 

「ど、どうするって……じゃあ、それくれよ」

「男に、戻りたいんだな」

「あ、当たり前だろ……」

 自分の答えをすでに知りつつ、相手が念を押してきた理由に思い当たって声が震えた。

 つまり……。

「男に戻ったら、この関係は終わりだ。ま、当然だけど」

 俊の心の声と、相手の声が重なる。

「じゃあ……」と、立ち上がりかけた佐野の腕を咄嗟に掴んでいた。

「センセーは……、センセーはいいのかよ? 本当に、終わりで……いいのか?」

「しょうがねえだろうよ」

「しょうがねえって……、好きだの、愛してるだの、ってあれ、全部嘘だった、ってことかよ。戯言かよ……、なんだよ、それ……散々こんな体にしておいて、その上、心までもてあそびやがって……」

 悔しくて、悲しくて、胸が詰まって言葉が続かない。ジョギングで負けた時よりも、百万倍も、悔しい。

「そうじゃなくて……、お前に言ったことは全部本当だけど」

 ぽん、と頭に手が置かれる。

「そっちが、気持ち悪いだろう。男と男じゃ、立派なゲイカップルじゃねーか。そしたらお前後ろの処女まで俺に奪われることになるんだぞ?」

「ネコ決定かよ……」

 穏やかに見つめてくる佐野に笑おうとしたが、口元が歪んだだけだった。でも、自分が全拒否されたわけではなく、今まで自分にかけられた言葉も撤回されたのではないという事実が単純に嬉しい。

「まあ……、希望としては……。でも、無理することねえし、男に戻りたい、っていうさっきの一言が本音なら、俺がそれにどうのって言える資格はねえし」

「そんなこと……」

 俊は俯いた。

 確かに、体が女になりたての頃は、気持ち悪かったし、早く男に戻りたいと、そればっかり思ってた。佐野に対する気持ちに変化が出てきたのは、確かに女になってからだ。じゃあ、男に戻ったら、佐野のことは好きじゃなくなるのか? 気持ち悪いって思うのか? 確かにケツの穴にあんな太いものを突っ込まれると思うと、正直、引く。……けど。

「俺……、センセーが……好きだ。この気持ちは、男に戻っても絶対に変わらないと、思う」

 感情を最後の一滴まで絞り出すように、告白した。

 だが、相手がいつまでも黙っているので、不安になり、上目で見ると赤面した佐野と目が合った。相手がバツが悪そうに笑って、くしゃっと俊の髪を撫でる。

「『絶対に』と『思う』って両立しねえけどな。ま、正直嬉しいわ。でも、やっぱり、俺は男に戻ったお前を縛り付けたくないし」

「だから、そんなことないって、言ってんじゃん。そんなに疑うならやってみろよ、後ろで」

 頭に載せられた手を思い切り払り、顎を上げると、佐野は俊の剣幕に固まっていた。

「いいよ。試してみないとわからないじゃん。これで気持ちよくなったら……前と後ろの処女奪ったセンセーが、全責任取るしかないじゃん」

「……そういう脅し方ってあるのかよ」

「いや……、なの? そっちこそ、やっぱり男の俺は……だから、そっちこそ嫌なんだろ、男のケツの穴に入れるのなんてさ……そうだよな、だいたいセンセーは最初から俺なん……」

 不意に口を相手の手が覆い、もごっと先を封じられた。

「全然、嫌じゃない。そりゃ、最初はお前を早く男に戻して何もなかったことにしたいと思ってたけど」

 俊が眉根を寄せると、佐野は口を覆っていた手で頰を撫でてきた。

「でも、最近はとにかくどうしたらお前をここから出さずに済むか、それだけ考えてたな。女のお前でも、男のお前でも構わなくて」

 それを聞いた途端、鼻の奥がツンとした。俊はとっさに目に力を入れる。

 なんでここで泣きそうになるんだ? だから女って嫌なんだよ。これ、ホルモンのバランスが乱れてるとか、そういうやつだ。そうだ、生理だし感情的になるってやつ。

「じゃあ、しようぜ。今」

 すっくと俊が立つと、佐野は破顔した。

「やめとこう」

「は? ほ、ほら、やっぱり……!」

「そうじゃなくて、生理初日だろ。辛いんじゃないかと思って」

「そ……そんなの」

 いつも、自分のことを自分よりずっと考えてくれる佐野が、ものすごく好きだ。

「平気……。ていうか、生理だから、後ろの穴使えるって理由にもなるし……」

「おまっ!! さっきから聞いてりゃ、打ちっ放しで俺のこと射殺する気だろ!」

「ハァ?」

「お前が悪いんだからな。もう、俺止めらんねー。まずはタンポン、入れさせろ。心配するな。知識はある」

「ええええっ!!」

 ニヤリと薄く笑った相手を見て、俊は養護教論なんて大嫌いだと心の中で叫んだ。

「……無理……だって」

下半身裸の俊は、バスタオルを敷いたベッドのヘッドボードに背を預け、大きく脚を開かされていた。その間で佐野がタンポンを入れようと割れ目に先端をあてがったところだった。

「入るって。息、楽にして。お前、普段はここにこれより何倍も太い俺のちんぽ全部入れてるんだぞ?」

「そ、そんな露骨に言うなよ……」

「まあ、1日目は出血少ないから……入りにくいかな。怖がって力むと余計入りづらいし、辛いのはそっちだからな。お前、ただでさえ締め付け凄いのに」

「だから、そんな露骨に……っふ……」

「ほら、入った」

 軽口は気持ちをタンポンから逸らす作戦だったのだろうか。とにかく、タンポンを押し込んだ佐野の中指が、第二関節くらいまで襞の中の間に埋まっていた。その指がさらにタンポンを奥にずらす。異物が体内を移動する感触に、思わず腰が引く。

「ん……」

 タンポンを沈めてくる指が膣壁を擦る感触に、俊は思わず声を漏らした。

「どう? 違和感ある? ちゃんと中に入れば異物感ないらしいんだけど。もっと、奥に行きそうだな……」

「ぁ、そんな、奥……」

 グッとさらに押し込まれ、こつんと子宮口を圧迫される感じが伝わった。

「よし、入ったみたいだ。っていうか、この眺め結構くるな」

 紐をピンピンと引っ張られると、膣が勝手にきゅっきゅっと締まる。

「ひ、引っ張るなよ。とりあえず、サンキュ……」

「どういたしまして。では早速……」

 佐野が膝立ちになり、いそいそとチノパンのボタンを外し始める。

「え、ちょっと、何……」

「何って、お前の後ろの処女開通儀式だろ?」

 当然のように言われ、俊は慌てた。

「で、でも今これ、入れたばっかりだし、様子見るとか、心の準備とか……」

「じゃ、やめとく? 俊が嫌なことはしたくねーし」

「だから、そういう言い方ってすげえ意地悪だと思うんだけど。したくないわけないじゃん」

 声高に言い返し、すぐにはっと我に返る。確信犯。

「お前、本当正直なやつ」

 佐野が薄笑いを浮かべながら俊のTシャツを脱がせる。すぐに自分も全裸になり、覆いかぶさってきた。

 キスをされるとすぐに唇を割られ、舌が入り込んでくる。蕩けるように濡れた肉が纏わり付いて、舌を吸われ、混ざり合う唾液を交互に啜り合った。

「はうっ……んんっ」

「もー、こんなに乳首立てて、俺の俊は本当に可愛いな」

 佐野の両手が、生理のせいで普段よりも張って大きくなった乳房を下からすくい上げ、指先がビンビンになっている乳首をかすめた。それだけで、敏感になりすぎている乳首の奥から全身に鋭い疼きが広がり、鳥肌が立った。

「あ、せ、センセー……」

「……センセーは、そろそろ止して」

「じゃ、なんて……」

 間近にあった佐野の顔が、また、赤くなる。結構、こいつもわかりやすい。

「普通に、名前で……」 

「あ、うん……」

 でもセンセーの下の名前ってなんだっけ……。あ……。

「こう、ちゃん……」

 え、と相手の口が薄く開いたが、そこから続く言葉はない。

「あっ、ごめ……ん、えっと、ななかに洗脳されたみたいで。『こうちゃん、こうちゃん』ってうるせーから。ほんと、悪い。えっと、」

 「名前思い出せなくて」、なんて言ったら雰囲気ぶち壊しだろう。ななかを言い訳に、名前を思い出そうと焦っていると、佐野は思い切り俊を抱きしめた。

「う、く、苦しいって……」

「ななか、グッジョブ……いい。それ、合格」

 佐野の息が首筋にかかかったと思うと、舌がゆっくりとうなじを這っていく。時々肌を噛まれ、微かな痛みを感じるが、またすぐに、柔らかな舌の甘い刺激が被さってくる。

「あっ……ん、ん……っ」

 そんな愛撫に加え、乳房を揉まれると体から力がスルスルと抜けてしまう。タンポンを入れられている膣がじゅんと疼く。

「こ、こうちゃん……して。もう、お尻に欲しい……」

 とにかく、佐野に満たされたい。触れられなかったのはたった二日なのに、佐野を求める気持ちは限界に達していた。

「ん……。優しくするから」

 自らうつ伏せになった俊は、尻を捧げるように高く突き上げる。だが、自分から言い出したものの当然不安はあり、アナルの蕾は固く閉じていた。だが、佐野の手がすぐに双丘を撫で回し、そのまま臀部を大きく割り開かれると、熱い息が肛門をくすぐった。

「ヒクヒクして、すげー可愛い。お前の尻の穴」

「やだ……見ないで」

 羞恥で俊は枕に顔を埋めた。けれど、すぐさま尻の穴に這わされた、その情熱的な舌遣いに頭をのけぞらせた。ペロリペロリと執拗に窄まりを舐められていくうちに、アナルは徐々に緊張を解いていく。それを相手も感じとったのか、佐野の尖らせた舌先が、そこへ潜り込もうと圧迫し始めた。反射的に括約筋がすぼまるが、舌の動きはひたむきだ。

「お前の尻の穴、美味しい」

 その感嘆の混じる声色に、俊は胸が熱くなる思いがし、体を火照らせた。排泄器官を舐められる恥辱と、またそんな場所を、溝の一筋一筋をなぞるように丁寧に舐めている佐野の愛情を強く感じながら、俊は自分が女である事実を次第に受け入れ始めていた。

 アナルは抉られ、舌先がめり込んだと思うとすぐに絞り出されるが、佐野は果敢に挑んだ。舌が食い込み、肉輪がまた少し弛む。そんなことを繰り返すうちに、秘孔は少しずつ拡がってきたようだ。

「尻の穴、だんだん開いてきたぞ」

「そんなこと……、言わ……ないで……」

 後孔をこれでもかと舐められて、羞恥で全身が総毛立つ心持ちなのに、禁断の場所を犯されている快感に気持ちは相当昂っていた。もっと激しく、もっと奥までえぐり、犯してもらいたかった。

「こう、ちゃん……もっと……奥……」

 俊がねだるように尻を振ると、すかさず舌が踊った。ぬちゅっと小さな音がたち、同時に舌は一気に根元まで勢いよく括約筋を潜り抜けた。その瞬間、息の詰まるような濃密な快美感が背筋を走り抜け、脳天に達した。

「んんんっ!」

 一度貫通を許すと、それまで舐めまわされた菊門はすっかり戒めを失い、緩んだ。濡れた舌が忙しなく前後し、肛門の内外を味わうように何度も抜き差しを繰り返す。

 クリトリスや膣に受ける刺激とはちがう、もっと卑猥で、腰骨の方までジンと痺れるような重みのある陶酔感に俊は身を震わせた。

「ああん、お尻の穴、変……変、なの……っ」

 舌をねじ込まれているのはアナルなのに、タンポンの埋まった膣からは淫液が溢れ出し、内腿を伝い落ちていた。

 突然、ふっと舌が抜かれたと思うと、じんじんと痺れるそこへすぐに指が入ってきた。

「はぁんっ!!!」

 びくん、と尻を跳ね上げるが、ほぐれていた肛門はそれをすんなりと受け入れてしまう。

「いい具合に柔らかくなってるな」

 指が中を丹念に押し広げながら、直腸を弄っている。最初は圧迫感があったのが、抜き差しされている間に、だんだんとその太さに馴染んでいた。

「そろそろ、入れてもいいか? なんか、うねうねしてるし、俺、限界だ……」

 俊が枕の上で頷くと、背後で佐野が腰を掴んできた。直後、熱いものが痺れる肛門にあてがわれる。腰を押さえる手に力が入り、熱く、丸い感触が窄まりを押し割ろうとする。

 佐野はすぐさま腰を繰り出したが、大きな亀頭冠は容易にアナルを貫通しなかった。

「怖くないから。力抜いて」

 体をかがめて佐野は耳元で囁くと、乳房を揉みながら乳首をひねり上げた。

「ぁは……ん」

 甘い刺激に、俊の緊張が緩んだタイミングで、佐野は強く腰を入れた。

 痛みを感じたのは一瞬だった。一番狭いところをにゅるんと亀頭が通り抜けると、痛みは霧散した。ただ、男根を咥えている入り口がジンジン痺れている。

「ああ、すげ……熱いし、……入り口、きつい」

 佐野がため息交じりに言い、腰をゆっくり動かし始める。

「ああっ、こうちゃん、擦れる……っ」

 亀頭が直腸を搔きわけるようにして奥に入ってきた。たちまち、未開の道を開拓される、ぞわぞわと不思議な感覚が背筋を上るが、その圧迫感が半端ない。

「う、動かさないで……苦しい」

「でも、お前……奥に吸い込む……」

 そう言いながら佐野は腰のくびれを引き寄せ、ズンと最後の突き込みをした。剛直が根元まで埋まり、俊は無意識のうちに肉茎を締め付けていた。いっぱいに埋まる佐野の形がはっきりとわかる。

 入れられている最中は全身が硬直していたが、全てを呑み込んだ今は、体が弛緩しきっている。額には汗が滲んでいた。

「全部、入った」

 佐野がポジションを正し、腰を抱え直す。

「大丈夫だから、楽にして」

 ペニスがゆっくりと引かれる。途端に得体の知れない感覚が体を駆け巡った。恐怖から肛門が収縮すると、余計に男根に張り付いた粘膜が引きずられるように摩擦感が強まった。

「ぁ、ああ……変、なの……っ」

「こ、腰動かすな……、締め付けすごくて、すぐに出そうだ」

 切羽詰まった声がし、肛門の入り口まで退いた亀頭がぐちゅりと再び奥にねじ込まれてきた。肉の穴が熱い欲望でジリジリと灼かれる。

 タンポンが粘膜越しにペニスに圧迫され、膣にも快感をよこしてくる。前と後ろの二つの穴を一度に責めらることなど初めてで、その与えられる快感の凄まじさに、俊は普段よりも一層感じやすい体をただ震わせ、喘ぐことしかできない。

「こうちゃ、んっ……ハァ……っハァ……、ぁは……ん」

「気持ちいいか? 生理だし、膣の感覚がさらに敏感になってるんだろ」

 佐野は俊が感じているのを認めると、大きく腰をゆすり始め、窄まりを擦りながらリズミカルに男根を出し入れさせた。腰を尻に打ち付けられるたび、直腸と膣と、子宮、それら全てを抽送の振動が揺さぶってくる。

「ぅ……っふ、ん、んっ……」

「声出して。出した方が楽になるし、気持ちよくなるから」

 腰を突き動かしながら、息を乱した佐野が声をかける。

「て言うか、俺、もう腰止まんねー……」

 直後、律動の勢いが速まった。肉を擦られる苛烈な痛みと、内臓が圧される苦痛と沸き起こる快感が、混じり合い、うねり出す。

「ああっ、ああん、こう……ちゃぁあんっ……」

 背筋に何度も甘美な電流が走り、全身の震えが止まらない。俊が首を捻って後ろを見ると、佐野は中腰になって感じ入ったように無心にピストンを送り込んでいた。

 ぬぽっ、ぬぽっ。ぬぽ、くぽっ……。

 異形の快楽が弾丸のように打ち込まれる。貫かれるごとに抽送が滑らかになっていく。

「アナルも感じると粘液を出すって、知ってた? お前、ここもちゃんと濡れてるよ」

 勃起を根元まで埋めて、佐野はわざと音を立てるようにしてちゅぽ、ちゅぽと激震をよこしてくる。

 お尻で感じてる。佐野に、アナルを激しく犯されて、濡らしてる……。

 俊は嫌々と首を振る。肛門を貫き、粘膜を押し割る剛直にゴリゴリと背骨から頭の芯まで響くような壮絶な喜悦を注ぎ込まれ、もう言葉も発せなかった。

 ぬぽ、ぬちゅ、ぬちゅ、くぽ、くぽ、くぽっ……。

 激しい摩擦が甘美な痺れをよこしてくる。

「っ、中が、まとわりついて……すごい、俊、お前すごすぎる……!」

「や、や、何がぁ……あぁん、変、お尻、熱くて、変なの……っ!」

 快感が腸で、膣でうねりまくっている。佐野がひときわ激しく腰を動かした。俊の頭の中が次第に真っ白になっていく。

「あ、こう、ちゃ……っ、激し……っ、なか、擦れちゃ……ぁ、だめ、だめ、それ、だめっ……ぁ、あぁあ、あん、あんっ、はぁああんん!!」

「あぁっ、俺、もうっ……出すぞ、中に、出すぞ……っ」

 熱いほとばしりが腸の奥に入った。膣にまで灼熱は広がり、タンポンの埋まった膣がキュンキュン疼く。熱い戦慄が、四肢を駆け抜けた。

「いくいく、いっちゃう、あ、ぁ、ぁ……」

 俊は体を強張らせ、喉を震わせた。射精の直後、佐野が背中に倒れこみ、俊は相手の腕の中で至福の瞬間を迎えた。

 体を弛緩させた俊の上に覆いかぶさった佐野の、荒い息遣いが耳をくすぐる。

「想像以上に……、俊の穴、良かった……、すげー良かった……。精子、全部、搾り取られたからな……。お前、ほんと欲張り……」

「そ、そんなこと、ない……」

 俊の体から、崩れるようにベッドに横になった佐野に抱かれて、覗き込まれた顔がすぐに熱くなる。

「で、お前は……? 無理してなかったか? やっぱり、もう嫌か?」

 佐野の首元で俊は激しくかぶりを振る。

「無理なんて……初めてなのに……、気持ちよすぎて、逆にびっくり……」

「そっか。じゃ……、男に戻っても平気だな」

 相手の真剣な眼差しに、俊はとうとうその日が来たのだと鼓動を高鳴らせた。大丈夫。怖いことはない。だって、佐野は男の俺も受け止めてくれるのだから。

 俊はしっかり頷いた。

「……薬、取ってくるわ」

 部屋を出た佐野が、すぐに水の入ったグラスと薬の容器を持って戻って来た。

「一晩で、少しは効果が見えると思う。今までの実験では。それでも一週間くらい投薬は必要で、それから様子を見たい」

 俊は、手のひらに乗せられた白い錠剤をじっと見つめる。グラスを受け取った手が震え、溢れた水で指が濡れた。佐野が隣に来て肩を抱いた。

「俺、ずっとお前の側にいるから。何があっても、絶対に離れない」

「わかってる」

 笑おうとしたが、うまくいかなかった。深く息を吸い、薬を口に放り込み、一気に水で流し込んだ。

 一週間後。

「なんか、全然変化が見られないと思うんだけど、気のせい?」

「おっかしーな……」

 遅い朝食をとりに来た家の近くのカフェ、テラス席で俊と向かい合っている佐野は、ipadを手に血液検査、毎朝測る体温、体重やスリーサイズなどのデータを見ながら首を傾げた。

「ラットではかなりの率で成功したんだけど。やっぱ、ヒトだと簡単にいかないのか?」

 そんな佐野を見ながらアイスラテを飲み、俊は訊いた。

「がっかりした?」

「そりゃ、な」

「俺は……、正直なんか、ホッとした」

 腑に落ちない、と言う顔をする佐野に、俊も自分に言い聞かせるように続けた。

「なんか……、これはこれで、今のところはいいんじゃないか、って。俺は……センセーが好きだし、センセーも、俺を好き……だし? 大学も、最初からこれで行けば大学デビューって感じで、ツッコまれなさそうだ、し?」

「また、すごいデビューだな」

 佐野は笑ったが、すぐに真顔に戻った。

「お前が好きだから……。お前が俺から離れたいと思うまで、俺はお前から離れないからな」

 手が伸びて来て、俊の手の上に重なる。その形のいい手に指を絡ませると、親指の付け根を指で撫でられる。そのまま俊が顔を寄せると、佐野も身を乗り出した。

「赤ちゃんできても、お尻でできるね」

 周りを気にして低く囁く俊に、佐野は目を瞬かせた後、苦笑した。

「孕ませてもいいって? お前、アラサーのおっさんなんて嫌なんだろ?」

 俊は言葉を詰まらせた。

 今、それ出してくるか。こいつ、やっぱ結構根に持つ方じゃねえか!

 でも、相手がずっとそれを気にしていたのだと思い直すと、胃のあたりがくすぐったくなる。

 俊はさらに顔を寄せて言った。

——薬のせいで、心も体も好みも変えられたんだよ。

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