女体化、とか。 (後編)

 俊は、座った男の上に向き合うように跨っていた。完全に座り切らず、女体化した俊の股間には、張り詰めた男の勃起の先端が浅く食い込んでいる。
 男の手が俊の腰を掴み、力任せに体をグッと押し下げていった。
 巨大な肉茎は亀裂を割り、ズブズブと飲み込まれていく。なんの抵抗感もないままに、最奥を突かれたと思うと、そのまま軽々と、体を人形のように思い切り上下に揺すりたてられた。
 視覚で捉えた限りでは、男のペニスは極太だった。だが、今擦られている感触はあまりにも頼りない。
 これは夢だ……。
 頭の中で自分の声がして、次の瞬間、俊はハッと頭をもたげた。
 すると、布団が剥ぎ取られ、スウェットのズボンと下着が引き下げられてむき出しになった脚の間に、佐野が座り込んでいた。
「センセー、何し、て……っんん……ッふ」
 体を起こそうとした俊の胎内を、ぬめる感触が往復し、不意打ちの淡い快感に突き上げられて、俊は頭をのけぞらせた。
「薬の効果、どうかなと思って」
「どうかな、って……っぁん、ふっ……う」
 佐野の指が出入りする場所から、にちっ、にちっと慎ましやかだが、淫靡な水音が聞こえてくる。
 俊は上だけTシャツ、下が丸裸という情けない格好で脚を開かれ、性器を指でかき混ぜられていた。
「おお、一晩で貫通してるわ。ここ……子宮口だ」
 最奥までねじ込まれた指をくいくいっと動かされ、その強烈な刺激に俊は全身を震わせた。
 指が一旦抜かれたと思うと、すぐに二本に増やされ、膣壁を優しく擦られる。指が動かされるたびに、ビクビクと腰が揺れた。
 昨日イかされた感覚がまだ燻っている。佐野に辱められながら、与えられた快楽はしっかりと体に刻み込まれていた。
 そのことに愕然としながらも、中で指が蠢くたびに腰が跳ね、抑えようとしても、喘ぎ声が漏れてしまう。
「いいねえ、全体がキュッ、キュッと締まる感じ。わかる? 感度いいってことだ。俺の指、もうビショビショだし。今、入れたらすげえ、気持ち良さそう」
「やめ……ろっ」
 俊はかき混ぜられている場所から、徐々に体に絡みついてくる官能を振り払うように、やっとそれだけ言った。
 嫌な奴に体を弄ばれ、感じて声を上げている。本当にこれが自分なのか、朦朧とする意識の中で判断がつかない。
「っつーか……、治ってねー……じゃん」
「治すつもりねーし」
「え……っ」
 俊は耳を疑い、佐野を見上げた目を見開いた。
 佐野は意味深にニヤリと笑うと、そのまま秘肉をかき分けて、滑った陰核を指先で突いた。
「ひ……っ」
 衝撃に膝が跳ねた。
 そのまま、猫の喉をくすぐるように指は突起を根元からクニクニと刺激してくる。
「まあ、せっかくだから、朝一でイっとけば? 女体化、もっと自覚した方が話は早いだろうし」
「なん……それ……っ………! っ……ぁふ……!」
 ペトリと濡れた生暖かいものが太腿の内側に触れたと思うと、ゆっくりと股間に迫って来た。
 指の愛撫をやめた佐野が、脚を舐めている。生暖かい舌で肌の上に唾液を塗り広げられる感触に、虫酸が走るような不快感が全身に広がる。
 しかし、不快感の後ろに潜む微かな期待に「やめろ」という声が出ず、俊はただ歯を食いしばった。
 やがてその舌先がついに陰唇にたどり着き、襞の間ををざらりざらりと舐め上げた。その途端、びりっと電流のような悪寒が下腹を刺激した。ヘソの下あたりで、何かがきゅんと収縮した。
 もしかして、今のが……子宮?
 その存在を初めて意識すると、佐野の舌が襞の間でねろねろと動くたび、くすぐったいような、切ない疼きがその場所から沸き起こり、波紋を起こした。
 佐野の舌は膣壁に沿ってねぶるように愛撫を繰り返す。チリチリ焼け付くような感覚に、俊は息を乱した。
「っ、はあっ、……っうん」
 舐められたその部分が次第に熱を持ち、溶けるような感覚に襲われる。額にじっとりと汗が吹き出し、頰が上気し始めた。
「あれ? 中がめっちゃビクビクしてる。感じてるのか? 女の部分ちゃんと機能してるのな。そうか、気持ちいいか」
 まさか。こんな屈辱的な仕打ちをされていて、気持ちいいわけがない。薬を盛られて一時的に体が女になったからって、感じるわけ、ない……。 
 俊は必死で自分に言い聞かせる。しかし、思いとは相反して、散々舐められた淫部は甘美な刺激にジンジンと脈動している。
 愛撫を再開した佐野の、執拗な舌が生み出す、今まで感じたことのない刺激に俊は思わずのけぞった。
 舌は出たり入ったりを繰り返しながら、奥へ押し入り、クチュクチュと音を立てて膣という膣を舐めまわした。
「ぁ、あ……っ、あん……っはぁ……………ッゥン!!」
 いきなり、濡れた唇に突起を挟まれてジュルッと吸われ、俊は一瞬で絶頂感に包まれた。舌先が勃起しきった突起を捉え、口の中でコロコロ転がす。転がしては、じゅっと吸い上げる。佐野はそれを何度も繰り返した。
「はんっ……あぁ、それ、やめ……っ……」
 胸が激しく波打ち、喘ぎ声が止まらない。クリトリスを陵辱する舌は、やがて硬くした舌先で上下左右と殴打してきた。
「ひっ……、ぁ、あ、はぁ、だめ、それ………あ、ぃ……いい、ぁ、ああん、あっ」
 俊は無理やり流し込まれる凄絶な快感にもはや手も足も出なかった。よがり続ける腰も、漏れ続ける嬌声も、もう自分では止められない。
 ただ、イきたかった。イかせて欲しかった。
 そして、すぐにその願いは叶えられた。
 ジュルルルルッ!
 佐野がビンビンに肥大しきったクリトリスを吸い上げると、俊の目の前で光がスパークし、腰が跳ね上がり、そのまま感電したように全身が震えた。 

「どうして……、俺をこんな目に合わす? なんで俺なんだよ。俺があんたに、なんかしたかよ」
 壮絶な絶頂を迎え、まだ焦点の合わない目で佐野を睨みつけた。
「なんかしたか? あー、憎たらしい。自分は何も知りませんっていう、その顔」
 輪郭はぼやけていたが、おそらく無表情の佐野は俊の顎を掴んでぐいっと上を向かせた。
「……ま、確かにキレーな顔ではあるよな」
 ペシッ、と左の頬を平手打ちする。音だけで、痛くない。しかし、平手のショックで目覚めされられた敗北感が、オルガスムスに火照った体を一気に冷やした。
「お前さあ、学年一の美女と付き合いながら、音楽の浜野先生とヤッただろ。それも校内で」
 一瞬、何を言われているのかわからなかった。だが、すぐに思い当たり、俊は愕然と佐野を見つめた。
 相手は怖いくらい無表情だった。
「どうしてそれを……」
「俺と浜野先生って、中学校一緒だったんだよね。その頃からまじ好きで、中学校卒業以来会わなかったんだけど、本当、偶然この学校で会って。運命だって思って、告ったんだよね。すぐに返事は来なくて、デートの誘いも気が乗らないみたいでさ、でも、しつこく誘ってたら」
 佐野は一呼吸置いて、俊を睨みつけた。その殺気だった視線は、尋常でないものを感じさせた。
「ある日、音楽準備室の鍵、渡されたわけ。放課後に来いって。これ、もしかしたら誘われてるんじゃないのって、すげー期待して、先生来るの待ってたら、隣の音楽室で人の声が聞こえてくるじゃん。ドアの窓越しに見たら、浜野先生とお前だよ。わけわかんなくて見てたら、キスし始めたじゃねーか」
 あ、確かに俺、音楽室で浜野先生とセックスした。でも、あれは成績の話があるって、あっちが誘って来て。
 釈明の言葉は、佐野の冷淡な目を前に喉元で凍った。
「頭の中真っ白になったよ。でも、目が離せなくて黙って見てたら、お前先生にフェラされて腰振りやがって。おまけにパイズリされて、バックで突きまくって、対面座位でフィニッシュだったな? お前もなかなかやるよな」
 すげえ、こいつ、全部見てやがった。
「あとで浜野先生が、お前の精液の匂いプンプンさせながら、準備室に来て」
「俺は……」
 俺は知らねえ……ただ、浜のっちが……。
「それで、『私、同い年には興味なくて、年下が好きなの。こうしたら、わかりやすいかと思って』だとよ。それからだよ。どうやってお前に復讐してやろうかって、ずっと考えてた」
 佐野が。あの時から……こいつが、全部仕組んだことだったのか。ずっと、時間をかけて。
 突き落とされた闇の世界に、再び佐野の声が響いた。
「あー、思い出したらムカついて来たわ。俺、傷ついたんだから、慰めてもらわないと気が済まねえな」
 佐野は俊の目の前で膝立ちになると、ボクサーパンツを勢いよくぐいと引き下ろした。すでに高ぶっていた佐野のペニスは、解放された途端、天を仰いだ。
 いきなり性器を見せつけられ、驚きで俊は現実に引き戻された。だが、それでもこの異常な状況についていけず、俊は狼狽のあまり薄く笑った。
「バカか、あんた。今の聞いて、そんなん、するわけねーだろ……。完全な……振られたやつの、逆恨みじゃねえか」
 佐野は畳み掛けた。
「でも、恨みは恨みだ。で、なんで女体化したか、知りたくねえの? それ聞いたら、今度こそ男に戻る解決法、わかるかもよ?」
「バカにすんのも、いい加減に……!」
 俊は、怒りに突き動かされるまま、体を起こして殴りかかろうとした。が、たやすく右手首を捕まれ、ぎり、と捻られた。
「……っ」
 女になったら、動きまで鈍くなったか。俊は腕の力を緩めず、佐野を睨みつけた。
「俺の親父が薬品会社の研究組でな、表向きは不妊治療の薬とか。でも、まあ世間に出せない研究とか、色々あんのよ」
 フッと俊の腕から力が抜けると、佐野は手を離した。腕がだらりと垂れる。
「あとは、俺を満足させたら、話してやるよ」
 悔しい。悔しい。スッゲー悔しい。納得いかねえ。
 俊は怒りで全身の血を煮えたぎらせながら、それでも、震える手を佐野の怒張に伸ばした。
 指先に、硬めの陰毛が触れる。俊は、覚悟を決めるようにゴクリと喉を鳴らすと、その赤黒く太い肉幹を両手で包んだ。顔を近づけ、自分も知っている雄の匂いを吸い込みながら、口を開いていった。
「……ふっ」
 大きすぎて先っぽすら大口を開けないと咥えられないが、何とかくびれの下まで口に収めた。
「噛むなよ」
 佐野の笑いを含んだ声を無視して、自分が気持ちいいと思うところを思い出しながら、くびれの下を舌先でくすぐってみた。
「……っ」
 鋭く息を飲む音。ブルリと体が震えたあと、ハッと、相手が詰めていた息を吐き出すと、手の中の怒張がさらに大きくなる。
 口内で、溢れて来た唾液を絡め、舌全体を使って灼熱の極太を舐め回す。
「女みたいに上品に舐めてんだな、もっと奥まで咥え込めよ」
 じれた佐野が俊の茶髪を握って、ぐっと股間を突き出した。
「う、うぐっ」
 グブリと陰茎を喉の奥に押し込まれ、俊は息が止まるかと思う。それでも、ゆっくり顔を前後させてフェラチオを開始した。堪え難い屈辱と口をみっちり埋められる苦しさで、頭の中が真っ白になっていく。
 俊は肉棒の根元まで深々と呑み込む。唇を大きく開いて、首を振り立てた。口腔内では、舌を動かして肉幹の裏筋に沿って絶えず刺激を繰り返す。指で陰嚢をヤワヤワと優しくもみ込む。
「そうそう、もっと優しくな。やればできるじゃん。さすがもと男。心得てるよな」
「あ、ふう……っ」
 頬張った俊の口の端から、飲み込みきれない唾液が滴り、顎を濡らす。下半身が、犬が尻尾を振るようにクネクネと動いてしまう。唾液と先走り汁が口内混ざり、じゅぽ、じゅぽっと卑猥な音が立つ。
 扱きたい。自分のを。頭の中では、自分の男根がビンビンと勃起している。だが、股間にあるのは、ただ痛いほどに疼くクリトリスだ。
「……っ、う……、まんざらでも、なさそうじゃん……。浜野も、こうやってお前のをしゃぶったのか……」
 佐野がいたぶるように言う。だが、そんな声音にさえも肌が粟立ってしまう。
「あっ……ふうん……んふ……っ」
 さ、触りたい……。俺の。触って、いじって欲しい……。
 腰の裏側で蓄積し続ける甘いうねりに体を火照らせ、息を鼻から漏らしながら、自分自身を慰めるように佐野の怒張を唇と舌で扱き続ける。
 剛直が、口の中で硬度を増して俊を煽る。
「おおお、いいぞ。……気持ちいいぞ、やべ……、いきそうだ」
 佐野が低く呻いた。ガチガチの肉幹が、口の中でぐんと膨れ上がった。佐野は俊の頭を押さえ込んで、自ら腰を激しく振り立てた。強い摩擦に、口の中が燃えるように熱くなる。膨張した亀頭に、喉の奥を何度も突かれる。
 じゅぶ、じゅぶ……じゅぶっ……じゅっーー。
 淫猥な水音と俊の「んっ、んっ」という鼻息がしばらくシンクロを続けた。張り詰めた勃起を受けていた顎が痺れ、擦られすぎた口内の感覚がなくなってきた頃、佐野のペニスがブルリとわなないた。
「出るぞ」 
「んっ……ふぐ、っふ、うう……」
 ピク、と勃起が痙攣したあと、ビュッと最初のほとばしりが喉の奥に噴出される。
「あぐっ……」
 俊は眉をぎゅっと寄せて顔を歪める。
「ぁ……っ、ああ、イくっ、いく……っ!」
 佐野が喘いだ。
 ビュク、ビュクビュクッ……、ビュルッ!
 熱く苦い粘液が弾け飛んで、大量に口腔内に流れ込む。その瞬間、俊も軽くイってしまった。
「うっ、うぐっ」
 その獣慾のほとばしりを、俊が喉を上下させて次々嚥下する間、膣は見えない怒張を引き摺り込むかのように収縮を繰り返していた。
「いい……ぞ。いい……」
 佐野は身を反らして、最後の一滴まで射精する。
 佐野の青臭い大量の精液を飲み下しながら、俊のぼうっと痺れた頭に絶望感が広がる。
 もう終わりだ。こんな男に、こんな惨めな女にされて、俺は終わりだ。
 目の奥が熱い。涙が流れないよう、ぎゅっと目を瞑る。しかし、そうすると得体の知れない喜びがじわじわと心を蝕んでいるのにも気がついた。
 俊は、佐野が脱力している隙に、頭を引いてぬぽっと口から肉茎を抜いた。性器と唇の間で唾液と男の粘液が糸を引き、切れた。
 あれだけ凄まじい射精をしておきながら、まだ半立ちを保っている。
 俊は息を整えながら、手の甲で口を強く拭った。すぐに声が降ってくる。
「おい、お前、全部飲んだの? そこまでするか? 普通。……あ、そういえば……昨日、忘れてたわ」
 上を仰ぐと、欲望にけぶる佐野の目と合った。怖い、と思った。この男が、怖いと思った。
 俊はベッドに両手をついたまま、じり、と後退りした。しかし、佐野はそれだけ距離を詰めてくる。片手で顎を掴まれた。
「な、なにをーーんんっ」
 上から顔が下りてきたと思ったら、唇が佐野の口で塞がれていた。首を振って逃げようとも、顎を掴んだ手がそれを許さなかった。もとより、体に力が入らない。
 固く結んだ唇を食まれ、吸われて熱っぽかった体がどんどん熱くなっていく。
 息苦しさから、思わず口を開けると、舌がねじ込まれた。
「んっ、ふうっ、う、ふん……」
 佐野の舌が口の中で俊に絡みつき、くすぐり、傍若無人に暴れまわる。大胆な舌の動きが、まるで身体中を舐めまわされているような感覚に陥らせる。その想像にさらに昂った俊の乳首は膨張し、痛むほど尖りきった。
 自分の体なのに、もはやコントロールが効かない。
 たかがキスなのに、どんどん快感が高まり、めまいがし始める。体の重心が狂い、上も下もわからなくなる。
 もう、やだ……。こんなの、変だ……。
 いくら頭でそう思っても、佐野の激しいキスを、脳みそが蕩けてしまいそうなほど甘く感じてしまい、体の奥は相手に埋められたいとキュンキュン戦慄いている。
 浮遊感に、体がぐるりと回転する。怖くて、思わず目を開けると、いつの間にかベッドに押し倒されていた。
「セン、セー……、おれっ……おれ……変、だ」
 相手の顔が少し離れた隙に、俊は必死で訴えた。佐野は驚いたように瞠目した目を、すぐにふっと細めた。
「変じゃない。俊は、全然変じゃない」
 再びのしかかってくる佐野の肩を慌てて押し返した。
「嘘、だって……っ」
「お前は今、俺のせいで女にさせられたんだから、これが自然な反応だろうが。まあ、敏感すぎるってのはあるけど」
 ていうか、と俊を見下ろしていた佐野は、顔を背けた。その耳が赤い。
「お前がもともと男って知ってて、ここまで発情する俺の方が変だろーよ」
 俊は相手の言葉を頭で何度か反芻して、笑った。
「ほんとだ……。センセー、変態じゃん」
「っるせーよ、お前、俺に向かってよく言ったな。だいたい、女のくせにその口の利き方ねえだろ。こりゃ、躾が必要だな」
 佐野の手が、胸をTシャツ越しに弄り始めた。膨らみきった柔らかな丸みを掴まれる。もちろん、ブラなんかしてないから、指がぐっと食い込んでくる。目覚めた官能を、揺さぶられる。
「はぁ……っ、いや……あ」
「そう、それでいい。やればできるじゃんか。もっとそう言う声を出せ」
 耳のあたりでそう囁き、首筋にキスをしてくる。
 くすぐったいのに、切ない。昂ぶるのに、安堵する。
 男にこうして触られるだけで、感情がこんなにもかき乱されることを、俊は初めて知った。
 キスをされてぼうっとなっていると、Tシャツを頭から抜かれる。佐野も、全裸になった。
 女子が噂していただけ、いや、それ以上の鍛えられた細マッチョを目の当たりにし、俊は直視できずに目を伏せた。
 佐野は再び覆いかぶさると、鼻先を肌に触れさせながら、唇を首のラインを沿って上下させた。その間もずっと両手は乳房を揺すったり、円を描くようにして捏ねている。
 指先が先端の硬くなりかけた蕾をつまんで弄ぶ。痛いような、くすぐったいような刺激に目の奥がじんとした。
 佐野の愛撫に感じ、確実に乱れていく自分が恥ずかしくなり、俊は相手の首に腕を巻きつけて肩口に額をこすりつけた。
「センセ……、怖い……」
 手の動きが止まった。乳房から離れた右手が、俊の頭をイイコイイコと撫でる。
「俺も、怖い」
「え?」
 思わず正面から相手を見据えた。真剣に見つめ返され、胸が苦しくなる。
「お前、壊しそうで怖いわ」
「こ、壊して……壊してもイイよ……センセーなら」
「ばか、目を潤ませて、そういうこと言うな」
「だって、もう、こんな体になっちゃって……。男として壊れてるし……それに、センセーが責任、取ってくれるんでしょ」
 そんなことが自然に口から出て、自分で驚いた。固まっていた佐野の顔が、破顔する。
「ったりまえだろ。一生責任とるのは俺みてーな変態しかいねえからな」
「あ、変態認めた」
「もう、止められねえからな」
「ん。止めないで。センセーの好きにして。センセーなしじゃ、いられないようにして」
「っとに、お前学習早すぎんだよ! なんでいきなり女になってんだよ。どんだけ可愛いこと言えるんだよ!」
「えっ……んむぁ!」
 唾液で濡れた乳首を、意地悪く舌先で小突かれる。その度に快感のパルスが全身を走り抜けて、白いシーツの上に投げ出された四肢がヒクついた。
 さらには乳房の先端を大きく咥えられて、赤ちゃんプレイかと突っ込みたくなるほど、チュパチュパと音を立て、舌を巻きつけてしゃぶって来た。
 そうされながら、乳房の下から持ち上げるようにいやらしく揉みしだかれると、どうしようもなく淫らな気持ちが湧き上がった。
「う、ふ……ぅっ、うふ……あふ……っ」
 甘いため息が止められない。
 もう、だめ。欲しい。欲しい。欲しい。中に欲しい。いっぱい、欲しい……。
 俊は全身で叫んでいた。佐野の下で体をよじらせ、太腿をこすり合わせれば、溢れすぎた蜜が襞に絡んで、にちゃにちゃと音を立てた。
 恥ずかしい音は佐野にはっきりと聞こえたのだろう。身を起こし、欲望をたたえた目で見下ろしてきた。
 それだけで、何もかも奪われた気がし、同時に、奪って欲しいと眼差しで応えた。昂まりすぎた欲望で胸が詰まり、唇は「入れて」と動いたが、そこから声は出なかった。
「ああ、入れてやる……。お前の新品まんこをぐちゃぐちゃに掻き回してやるよ」
 佐野は、俊の開いた両脚の間で、額に張り付いた前髪をぞんざいに掻きあげると、俊の腰を抱え持ち、傘の開いた亀頭の先を秘裂に押し当て、ジワリと腰を推し進めてきた。
 ぐずぐずに蕩けきってすっかりほぐれたそこは、難なく男根を呑み込んでいく。
「ーーーーぁ」
 ゆっくりと肉を割っていくその凄まじい圧迫感に、俊の息が詰まった。
 頭をのけぞらせ、背中を弓なりにして、佐野がみっちりと埋まっていく感覚を目を閉じて味わった。膣肉を広げながら侵入してくる佐野のそれは、口を犯された時よりもずっと大きく、太く感じた。
「お前、すげ……熱いし……きっつ…………」 
 根元まで屹立を埋め、佐野はベッドに両手を付くと本格的な律動を始めた。
 凄まじい圧迫感と引き裂かれるような痛みに、頭の中が一瞬真っ白になった。
「すげえ、これ、出来立てホヤホヤの膣に俺、入ってんのか。なんか、感動する」
 言い終わらないうちに、佐野が埋めていた深淵から浅瀬まで腰を引いた。膣口が擦られ、股間からヒリヒリとした痛みが広がり、俊は思わず息を呑んだ。
 刹那、再び強引に捻じりこまれる。無理やり中を広げられる感覚から逃げようとした体はすぐに抱きしめられ、拘束された。
 のしかかったまま、佐野は律動を始めた。突き上げられるたびに、ぬちっ、ぬちっと淫猥な水音が立ち、大きく開いた両膝が揺れた。
 佐野は激しく腰を打ち付けながら、俊の顔の横で息を乱している。「ああ」と喉を低くならしては、中の感触を味わうようにゆっくりと膣壁を擦り上げてくる。
 すでに一度絶頂を与えられたナカは、突かれるごとに佐野の太い剛直に馴染んでいった。佐野は、緩急をつけて深く浅く、浅く深くと、俊を責め続けた。佐野が腰を引くたびに、淫液がグチョグチョと掻き出され、股間を濡らす。
「あぁあ、ぁあ、こすれる、すご……おっきい……っ」
 ナカ全体を振りの大きいストロークで擦られ、俊はあっという間に覚えたばかりの浮遊感に襲われる。 
 俺の中、どうなんだろう。
 急に不安に襲われ、息を切らせながら思わず呼びかけた。
「センセー……」
 揺れていた腰が止まり、佐野が体を起こして不思議そうに見下ろしてきた。
「辛いか?」
 逆に心配され、俊は目を瞬いた。
 なんだ、佐野、やさしーじゃん……。
「ううん、センセーは、気持ちいいかなって……」
 佐野は顔をほころばせた。
「ああ、サイコー」
 ホッとすると同時に、そのまま両足を抱え上げられた。
「ぁん……!」
 今までとは打って変わって、強く、速い抽送に俊は身をよじらせた。ぐい、と腰を押し付けられ、大きく回される。グチュリ、とひときわいやらしい音がたち、中からさらに蜜が溢れ出るのがわかった。太い肉棒で処女を散らされたばかりの膣道が、容赦無く凌辱される。
 そんな恥辱を味わされつつも、俊は無意識に自ら相手を誘うように、腰を揺らしていた。
 佐野が俊を見下ろしながら、探るように律動させた勃起が感じる場所に当たると、その壮絶な快感に歯の根が合わなくなるほど、総身が震えた。
「ここがいいのか」
 奥を、張り詰めたカリで小刻みに引っかくように、佐野は絶妙な腰使いで俊を攻めた。途端に、じん、と頭の芯が痺れ、目の奥が熱くなる。
「ぁ、あ、ああ、そこ……そこっ……」
 小さな喘ぎ声が、俊の唇からひっきりなしに漏れ始める。
 俊は自分が信じられなかった。自分の体に、こんなにも感じる部分があったことを。
 首筋も、耳たぶも、乳首も、内腿さえ、次々と佐野に女の喜びを開花させられる。
 痛みが快楽に変わった瞬間に、俊の世界が全てひっくり返った。
 男が女に、プラスがマイナスに、そして地獄が天国に。
 佐野が、全てを変えてしまった。佐野というたった一人の男に、全てを変えられてしまった。
 体が変わり、最悪の状況でも、これが幸せなのだろうか。まだ俊にはわからない。
 ただ、今は、自分を女にした相手に無理やり愉悦を与えられている。壮絶な快楽をとめどなく流し込まれながら、自分は貪欲にそれを求め、嬉々として受け入れている。
「あぁっ、俺……こんなに、なっちゃって……恥ずかしいっ……!」
 相手に合わせて激しく腰を上下させながら、俊は被虐の快感に翻弄される。
「ああ、恥ずかしいよ、高嶺俊はすごいインランで、めちゃくちゃエロい。でも、それを知ってるのは、俺だけだ……どうせなら、もっと、辱めてやるな」
 佐野は声にいたずらなものを含ませながら体を起こすと、挿入したまま俊の体を膝に乗せた。急に対位が変わって驚いた俊は、思わず相手の首に抱きついた。
「っ、クゥ……ん、おく……奥に、当たる……っ」
 対面座位でさらに結合が深まり、子宮口に先端がめり込むと、俊は顎を佐野の肩に埋めて喘いだ。
「ああ、でも、感じるだろ? 中がキュンキュンしてるぞ。浜野せんせえも今のお前みたいに、気持ち良さそうだったもんなあ」
「ャア……あっ、それ、俺の、せいじゃ…………、なあっ、いいっ、いい……っ……」
 ベッドのスプリングを利用し、軽快に奥を突き続けている佐野が、両手で乳房を揉んできた。柔肉を手の中で歪めながら、先端を指でこね回してくる。
「あっ、それ、やっ……潰しちゃ、や……っ」
 痛みさえも快楽を助長し、一気に高みに持ち上げられる。
「や、って言っても、これやると、ギチギチに締まるんだけど? もう、ちんぽ咥えたここ、ぐちゃぐちゃだし」
「そん、な……」
 耳元で低く囁かれ、俊は恥ずかしさからぎゅっと佐野にしがみついた。
 熱く、しっとりと汗ばんだお互いの肌が密着する感触に安堵を覚えると同時に、立ち上る佐野の野生的な男の匂いに、性器だけではなく、臭覚さえも犯されているような気持ちを覚える。
 いや、臭覚だけではない、佐野の精液を飲み、味覚さえ、そして、相手の息遣いにさえ反応する自分は、もはや五感ごと佐野に奪われたのだ。その事実に気づくと、俊はなぜか異様に昂った。
「おい、なんで締まるんだよ……も、ギチギチで、どろっどろで、俺、我慢できねーわ、俺、イくな。だからお前も一緒に来い」
「え、な……っ?」
 宣言と同時に、佐野は俊の腰を持って前後に揺すりながら、激しく突き上げた。重い衝撃に子宮が揺さぶれ、歓喜にわななく。
「あああん、すご……い、や、いいっ、気持ち、いいっ……いく、っ、あ、ぁ、ぁ」
 俊は迫り来る、何度目かのオルガスムスの予兆を感じながら、佐野の動きに全てを委ねた。佐野が、連れて行ってくれる。一緒に、イける……。
 佐野が貫きながら、乳房に歯を立て、乳首に舌を絡めて舐めしゃぶると、一気に絶頂に上りつめた。
「やぁああああっ!」
「っはあぁ!」
 佐野も低く呻くと、精液を撃ち放った。
「あ……、中に、熱いの……センセーの、入ってる……」
 灼熱の大量の精液に子宮が炙られ、俊は全身をビクビクと震わせて、初めての味わう女の悦びに恍惚としながら、呑み込まれていった。
 

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